マイニングの消費電力、ビットコインの将来が気になる【仮想通貨小耳ネタ】

ビットコインのマイニングは、世界中のマイナーが競争で行います。
競争に勝つためには、大きな資本を投下して、高速なマイニング専用コンピューターを大量に使用します。

結果として、マイニングによって、世界中で大量の電力が消費されています。
このままいくと、ビットコインというシステムが、電力の使い過ぎで崩壊してしまうかもしれません。

今日は、この問題について考察してみます。

マイニングで消費される電力量はどのくらい?

世界中で実行されるマイニングによる電力消費量は、2018年5月の半ばの時点で67TWh
現在も伸びつつあります。
今のトレンドでは、2018年末には、全世界の電力消費の0.5%を占めることになりそうです。

参考 BITCOIN WILL USE 0.5% OF WORLD'S ELECTRICITY BY END OF 2018, FINDS STUDYINDEPENDENT 参考 BTCマイニング、18年末に世界の電力消費量の0.5%に=経済学者が予測COINTELEGRAPH

この電力消費量は、デンマークとかチェコとかといった国の消費量に匹敵するレベルです。

これだけの電力を使用して実行しているビットコインの取引は、1日に22万回
これに対して、クレジット決済のVISAは、1日に1億5000万回もの取引を決済します。

取引に関するエネルギー効率という観点では、ビットコインはまったく不合理な存在です。

ビットコインマイニングの電力消費が激しい訳

ビットコインのブロックチェーンは、ビットコインの取引履歴が格納されたブロックをチェーン状に連結したものです。

チェーンを連結する作業がマイニング。
マイニングは、SHA256というハッシュ計算をひたすら繰り返して、目当てのハッシュ値(=ハッシュ計算の結果)を一つだけ作り出す作業です。

ブロックチェーンとマイニングの概念図

マイニングは、世界中のマイナーが競争で行います。

最初に目当てのハッシュ値を作り出し、マイニングに成功したマイナーに対して、報酬として新しいビットコインが発行されます。
報酬額は、2018年9月現在12.5BTCです。

このあたりの詳細は、以下でも説明しています。

マイニングはどのぐらい難しい? 自分で掘る前によく考えよう【仮想通貨技術解説】 ハッシュの崩壊はビットコインの崩壊?【仮想通貨技術解説】

この競争に勝つためには、高速にハッシュ計算を繰り返すことが必要です。
そのために、企業マイナーは、大きな資本を投下して、高速なマイニング専用コンピューターを大量に使用します。

大量のコンピューターは、大量の電力を消費します。
その結果が、全世界の電力消費の0.5%という数字です。

電力消費量を減らすことができるのか?

では、マイニングの電力消費量を抑える、または、減らすことができる方策があるのでしょうか?

PoWをやめて、他のコンセンサスアルゴリズムに変える

全世界のマイナーが競争でマイニングをするのは、どのブロックチェーンの正当性を支えるコンセンサスアルゴリズムが、PoW(=Proof of Work)だからです。

攻撃者が攻撃を成立させるためには、不可能なほど膨大な作業を必要とする。

これによって安全性を保つのが、PoWです。
世界中のマイナーは、このために膨大な電力を消費して、マイニングを続けているのです。

ビットコインのコンセンサスアルゴリズムを、PoWからPoS(=Proof of Stakes)等の別の手段に変えることができれば、消費電力量の問題から解放されるでしょう。

だが、すでに大きなビジネスとなり、様々なステークホルダーが入り乱れているビットコインのビジネスにおいて、この改変を選択するのは相当に困難に思えます。

マイニング専用コンピュータの電力消費量は下がっている

マイニングに使われるコンピューターの電力消費量は、大きく減少しています。

現在、マイニングには、ハッシュ計算に特化したASICを使った専用コンピュータ(ASICコンピュータ)を使うのが主流です。
ASICは、用途向けにカスタム化された集積回路です。

ASICコンピュータのコスト性能は、継続的に向上しており、より少ない電力で多くのハッシュ計算が実行できるよう、対電力効率は改善されています。

【BTC】ハッシュレートの成長率とASICの性能向上率について (2018/7/29)

でもね、これでは電力消費量は下がらないんです。

少ない電力消費でハッシュ計算ができ、その分マイニングコストが減ったら、その分ASICコンピューターを買い足すから。
あるいは、古いASICコンピューターを入れ替えるでしょう。

マイナーは、常にマイニングの競争に勝つ確率を高め、より多くのマイニング報酬を得たいのです。
儲けが出る限り、ASICコンピューターを増強し続けることでしょう。

ですから、ASICコンピューターの性能向上は、マイナーのハッシュ計算力の向上にはつながりますが、電力消費量は下がらないと思われます。
しかも、マイナーのハッシュ計算力が上がったところで、ビットコインの取引の確認能力は上がりません。

技術の革新によってハッシュレートが上がることが安全性につながるとの議論もあります。
しかし、新しいASICコンピューターを最も早く大量に導入するのは、大規模な資本を投下できる、大規模企業マイナーです。
その結果、現時点でも懸念されるマイナーの寡占状態が、より深刻になるでしょう。

ASICコンピューターの性能改善は、ビットコインにとってpositiveな要因ではないのです。

ビットコインの価格が下がれば、電力消費量は下がる

では、どうなれば電力消費量は下がるでしょうか?

確実なのは、マイニングの報酬額が下がり、マイニングの損益分岐点を下回ることです。

マイナーは利益を得ることを目的にマイニングを行いますから、損をするぐらいなら、新たな投資は控えます。
電力の消費効率の悪いASICコンピューターから、止めていくでしょう。
それでも利益が出なければ、マイニングビジネスから撤退します。

その結果、世界中で行っているマイニングの競争が緩和され、損益分岐点以下の、より低いコストでマイニング報酬を得ることができる、新たな均衡点に業界全体が移行すると思われます。

では、どうやればマイニング報酬が下がるでしょうか。

半減期によるマイニング報酬の半減

一つは、半減期によるマイニング報酬の半減を待つ、という方法があります。

ビットコインは、4年に一回マイニング報酬として新規生成されるビットコインの額が半減します。
2018年9月現在はマイニング報酬は12.5BTCですが、2020年には6.25BTCとなります。

ビットコインの半減期って何? 相場への影響は?【仮想通貨技術解説】

このタイミングで大きな消費電力量の減少がみられるかもしれません。

ビットコイン価格へのマイナーの影響力を下げる

以下は、ビットコインの価格(対USD)の推移です。

BTC/USDの価格推移

参考 Bitcoin Market PriceBLOCKCHAIN

ビットコインの価格は、2017年末から2018年頭のピークを過ぎてから、低迷を続けます。
ですが、1BTC = $6,000のラインを下回ったことはありません。
なかなか、ここまであからさまで固いサポートラインにお目にかかる機会は少ないでしょう。

これは、大手イナーが買い支えていると解釈することもできます。
ビットコインの価格が下がると、マイニングの報酬が損益分岐点を下回ってしまうからです。
マイナーの立場では、マイニングの報酬が損益分岐点を下回りそうな場合、マイニングビジネスから撤退するよりも、ビットコイン価格の買い支えの戦略をとろうとします。

その結果、マイニングの電力消費量は減りません。

この状況を打破するには、ビットコインに関するマイナー以外のステークホルダーの影響力を強化する必要があります。
ビットコインによる物の売買、ビットコインを使った様々な金融商品の展開を通じて、ビットコインに対する様々な立場の関与者を増やす必要があります。

それは、ビットコイン経済を発展させることとイコールなのかもしれません。

※追記
2018年11月のビットコインキャッシュのハードフォークをきっかけとして、ビットコインの価格は1BTC = $6,000のラインを大きく割りました。
その結果、マイニング事業から撤退する企業が出て、ビットコインのハッシュレートも下がっています。
2019年1月現在、マイニングの損益分岐点によるとみられる明確なサポートラインは、見えない状況。
現時点では、ビットコインの価格に対するマイナーの影響力は低下しています。