”歴史は繰り返さないが韻を踏む” 投資会社CEO Dan Morehead氏の予測1BTC=$11.5万を検証する

ストック・フロー比率(SF比率)によるPlan Bの予測、ご記憶でしょうか?
ビットコインの既存発行総量と新規発行量の比であるSF比率を使って、過去の価格の推移を説明し、今回の半減期後のビットコインの価格を5.5万ドルと予測したものです。

金や銀など、他の投資対象も持ち出して同じ基準で比較しており、そこそこ説得力のありそうな予測でしたね。
結構話題になってました。

お忘れのかたはこちら…

最近、SF比率を使ったモデルの改訂版をPlanBが出したようで、そちらでは半減期後の次のピークを28.8万ドルとしています。

ですが、今日はその改訂版の話ではなく、SF比率と同じく半減期をメインの説明因子にした別の予想の話です。

ベンチャーキャピタルCEO Dan Moreheadさん
ビットコインに関する強気の予想をくずさない方ですが、今回、半減期後の次のピークを11.5万ドルと予想しました。

SF比率こそ使っていませんが、価格の推移を説明するのに、半減期による新規発行量の減少の影響をメインに据えています。
今日は、この予想について検証していきましょう。

Dan Moreheadさんってどんな人?

Dan Moreheadさん
仮想通貨・ブロックチェーン領域のベンチャーキャピタルであるPantera CapitalのCEOです。

ゴールドマンサックスなどの金融業界で働いていた方で、2003年にPantera Captalを創業しました。
当初は、ヘッジファンド等への投資中心でしたが、2014年あたりから仮想通貨メインに。この業界ではそこそこの有名人です。

こんなお顔…

以前から、ビットコインの将来価格については、強気の予想が目立ちます。

例えば…

「年末のビットコインの価格は2万ドル」 2020年4月

「2021年ビットコインは3,800万円」 2019年7月

「ビットコイン価格は2019年末までに67,500ドル」 2018年7月

多くの場合、強気予想の根拠は、過去のチャートに線を引いたぐらいのもので、そんなに深みは感じられません。
今回の予想も、よくよく見れば突っ込みどころは満載なのですが、少し気になるところもあるので、取り上げてみた次第です。

Danさんの今回の予測はどんなもの?

Danさんの予想のエッセンスをまとめてみると…

  • 過去のビットコインの値動きを見る限り、平均的に半減期の459日前に最安値を迎えて、そこから上がり始め、半減期から446日後にピークを迎える。
  • ピークの強さは前回同じではない。前回のピークは前々回の2011年6月のものより小さかった。次に来るピークも、2017年末ほど大きくはないはず。
  • ピークの強さの減少は、総流通量に対する半減による通貨発行量減少のインパクトが、小さくなることに起因する。
  • 上記を踏まえて予想すると、今回の半減期後のピークは2021年の8月ごろ。1BTCが11.5万ドル強の価格になると思われる。

上記の主張を、「歴史は繰り返さないが韻を踏む(History doesn’t repeat, but it often rhymes.)」というMark Twainの言葉を引用しながら述べています。

Bitcoinの過去の値動き Pantra Capitalによる

Danさんのロジックをもう少し紐解きましょう。

半減による通貨発行量減少のインパクト

彼は、半減による通貨発行量減少のインパクトを、以下のように計算しています。

半減による1日分の通貨発行減少量 × 半減期からピークまでの平均期間446日
÷ 半減時の発行済通貨量

要は、半減期後の446日間で半減によって減った分が、全発行量のどのぐらいを占めるか、を示したものです。

ビットコイン半減のインパクト

ビットコイン半減のインパクト Pantera Capitalによる

計算結果がこの表。

2012年の半減期の時には15.3%だったものが、2016年の時には5.1%に、2020年の今回は2.2%に減少する。
それだけ半減の影響は小さくなっていっており、2016年の半減期はその前の回の3分の1、今回は前回の2.3分の1のインパクトしかもたない。

半減期のインパクトと価格のピークの関係

次に、この半減期のインパクトと価格のピークの関係です。

半減期後のビットコイン価格のピーク

半減期後のビットコイン価格のピーク Pantera Capitalによる

2012年の半減期では、半減期時からピークまででビットコインの価格は9,712%に伸びました。
2016年でも大きく伸びてはいますが、2,910%で、前回の3.2分の1の伸びにとどまっています。

半減のインパクトが3分の1、価格の伸びが3.2分の1…
これって、価格の伸びと半減のインパクトて強い関係にあるんじゃ…

ってなことで、2020年の半減期からピークまでの伸びを、半減のインパクトの減少を考慮して前回の2.5分の1とおき、半減期直前の現在の価格から伸びを計算すると11.5万ドルになる!!

こんな感じのロジックです。

この予想をどう評価する?

この予想、正直言うと説得力があまりないという印象をもっています。
でも、少し惹かれるところもあるんですよ。

問題点1:サンプル数が少なすぎて信頼できない

最も問題なのは、予測のよりどころとなる過去のデータが少なすぎるというところ。

2012年と2016年の半減期の間で、半減のインパクトと価格の伸びの数字がたまたま近かった。
じゃ、2020年の半減期でも、同じようになるだろう。

これは、予測というにはあまりに薄弱な理屈だと思いませんか?

問題点2:ぶれやすいピークを予測しようとしている

次に問題なのが、価格のピークを予測しようとしていること。

通常、価格の最高到達点は、様々な事情でぶれやすく、予測に向きません。
あえてそれを予測するのは、世間に対する啓蒙的な意味があるし、世間がそれを求めているからでもあるんでしょう。

でも、おちついた市場での価格帯を予測するほうが、ずっと意味がある作業です。

問題3:なぜそうなるかのモデルがない

そもそも、発行量半減のインパクトと、価格のピークの関係性についてのモデルがない。
そりゃ、何らかの関係はあるようには思えるが、それがどういう関係性かについての洞察がないのが、とても寂しい気がします。

現状では、単にそれっぽい感じに数字を合わせこんだに、すぎません。

それでも筆者がこの予測に注目している理由

ここまで、結構辛口にこの予測を評価してきましたが、気になっている点もあります。

ストック・フロー比率に関する議論の時に少しお話ししましたが、PlanBの予測では、半減していくけば行くだけビットコインの価格が無限に上がっていくことになっています。

でも、実際はそんなことがあるわけもなく、半減期とピークを繰り返すうちに、伸びるにしても鈍化すると考えるのが妥当なはず。
もっと言えば、ビットコインの価格の予測は、将来の伸びの鈍化も説明しうるものでなければ、信頼性が低いと思えます。

Danさんの予測は、半減期による発行量減少の影響がだんだん小さくなっていく、という部分を含んでいます。
ビットコインの価格予測のための、よりよいモデルへのヒントになるかもしれません。