TRONのスーパー代表投票の仕組みを解説 投票でどのぐらい稼げるの?

先日、ステーキングがこれからのトレンドになるとの記事を目にしました。

電力の過度な消費や51%攻撃の危険性など、Proof of Workの不合理さが顕在化する中、自分が持つ通貨の一部をステーキングし、それに対して報酬を得るビジネスがこれからメジャーになる、という趣旨の記事です。

このブログでも、すでにイーサリアムのステーキングについては議論しましたが、計算上の数字だけを見る限り、悪くない利回りがでそうな感じでした。

Proof of Stakeは金のなる木か? イーサリアムがPOSに移行したら…

実は、Delegated Proof of Stake:DPoSでも、ステーキングによって報酬を得ることができます。
典型的な例がTRON。

TRONでは、ネットワークの参加者の投票により、ネットワークを運営するスーパー代表を決定しますが、その際、スーパー代表から投票者に対して報酬としてTRXを配布することが行われています。
つまり、TRXをステークして投票すれば、TRXが増えるのです。

なかなか興味深い.

でも、実際にはどのぐらいの報酬が得られるのでしょうか?
意味のあるレベルなのか?
このあたり、検証してみました。

TRONの概要

まずはTRONの基本事項を…

名称 TRON 通貨単位 TRX
時価総額 約1,768億円 時価総額ランク 11位
発行上限 990億TRX 発行済枚数 約660億TRX
公式サイト https://tron.network/ 公開 2017年
コンセンサスアルゴリズム Delegated Proof of Stake
TRONを扱う国内取引所 TRONを扱う取引所は国内にはありません

TRONは、ブロックチェーン上で動く分散アプリケーション:dAppsのプラットフォームです。
立ち上がり当初はイーサリアムのネットワーク上で動いていましたが、2018年6月に独自ネットに移行しました。

同種の位置づけを狙っているものとしては、メジャーなイーサリアム、そして時価総額ではTRONに先行しているEOSがあります。
dAppsの領域では、この3者がしのぎを削っているのが、現在の状況。
老舗のイーサリアムに、新興のEOSとTRONが果敢に挑んでいるという感じです。

TRONの概要、創設者のJustine Sun氏に関しては、以下でまとめています。

dAppsのプラットフォームTRONを解説 創設者のJustin Sunはどんな人?

TRONのDPoSの詳細とスーパー代表選挙

TRONのコンセンサスアルゴリズムは、Delegated Proof of Stake:DPoS

DPoSは、ネットワークの参加者の投票によって複数人の代表者を決め、その代表者たちが、ネットワークの運営方法の決定や、マイニングを行う方式です。
EOSでもDPoSを採用しています。

※コンセンサスアルゴリズムの比較に関しては、以下にまとめています。

氾濫するProof of Xをここらでまとめて解説 コンセンサスアルゴリズム編(PoW, PoS, PoI, DPoS)

※EOSについては、以下でまとめています。

EOS イーサリアム越えの高ポテンシャルが魅力【アルトコイン 次に何買う?(1)】

TRONのDPoSについての詳細は、ホワイトペーパーに記載されています。
主な部分をピックアップしましょう。

TRONの運営を行うのはスーパー代表

TRONの運営を行うのはスーパー代表:Super Representativeです。

スーパー代表の定員は27
ネットワーク参加者による選挙で決定します。
選挙は6時間ごと
つまり、スーパー代表の最短の任期は6時間です。

この最短任期の6時間を1ラウンドといいます。
年間では、4ラウンド/1日 × 365日 = 1,460ラウンドです。

スーパー代表は、以下の役割を担います。

スーパー代表の役割1
ブロックの承認

TRONのトランザクションのブロックは、27のスーパー代表によって生成されます。
ペースは3秒に一度。
生成されたブロックは、それに引き続いて19blockが作成された時点で正規のブロックとなります。

スーパー代表の役割2
TRONネットワークの各種パラメーター変更の提案と議決

TRONネットワークは、様々なパラメーターで動いています。
トランザクションにかかる手数料、ブロック生成に対する報酬、スーパー代表の選出の時間間隔などなど…

これらの変更を提案し、議決するのはスーパー代表の役割です。

スーパー代表は投票で選出

27のスーパー代表は、TRONのネットワーク参加者の投票で決まります。

投票者は、TRXを持っているあなたです。

投票をする場合には、TRON Power:TPが必要。
TPは、現在所持しているTRXのうちのいくらかをフリーズして得ることができます。
TRXのフリーズは、Proof of Stakeのステークと同様。
フリーズしたTRXはロックされ、取引には使用できなくなります。

投票者は、TRXのフリーズによって得たTPを、自分が支持するスーパー代表の候補者に投票します。

スーパー代表は、各候補者が投票者から集めたTPの量によって決まります。
6時間ごとにTPの量が集計され、スーパー代表が入れ替わる仕組みです。

投票者は、当面使う予定のないTRXをフリーズしてTPに変え、勝たせたい候補者になるべくたくさんのTPを投じることになります。

誰がスーパー代表なのか? 誰が立候補しているのか?

現在のスーパー代表が誰なのか? 誰が立候補しているのかは、tronscanの「TRONスーパー代表」のタブで見ることができます。

スーパー代表のリスト

スーパー代表のリスト  tronscan.orgより

これは、2019年5月のとある日のスーパー代表のリストです。
得票数1位でスーパー代表に選出されたのはSesameseed、TPの得票数は13億TP弱で全体の15.59%です。

投票者は、tronscan.orgなどから候補者の情報を入手して、
どの候補者を選べば、TRONのネットワークが円滑に運営できるか?
どの候補者が、TRONの発展に寄与できるか?
をよく吟味して投票することが求められます。

 

ということで、ここまではまだ今日のお話の準備…
本題はこれからです。

我々いち庶民投票者にとっては、スーパー代表の投票は、単にTRONネットワークの将来の問題ではありません。

実は

スーパー代表に投票すると、報酬としてTRXが配布される!!

のです。
TRXをフリーズしてTPに変えて投票するだけで、TRXが増える…

取引所に預けていても、リスクはあるのに利子はつかない、理不尽な仮想通貨の世界。
そんな中、なんともおいしそうな話…
こうなるとがぜん興味がわいてきます。

なんでそういうことが可能なんでしょうか?
そして、どのぐらいもらえるんでしょう?

この仕組みの内容や、期待できる報酬の大きさについて、次に述べましょう。

スーパー代表に投票するとTRXが手に入る!!

スーパー代表は、スーパー代表としての役割を果たしたことに対する報酬として、新規のTRXの発行を受けます。
そして、多くのスーパー代表が、自己が受け取った報酬の一部を、自分に投票してくれた投票者に分配しているのです。

スーパー代表が報酬として受けとるTRXの量

スーパー代表が受け取る報酬は、得票したTP数に応じて得られるVote Rewardと、ブロックの生成に対する報酬であるBlock Rewardの2つがあります。

Vote Reward
スーパー代表選挙で127位までに入った場合に得ることのできる報酬

Vote Rewardは、27位までのスーパー代表を含む127位までに入った候補者に対して配布される報酬です。
1ラウンドあたり総量115,200TRXがVote Rewardのトータル。
これを、各候補者が得票したTPの比率に応じて配布します。

例えば、前出のスーパー代表Sesameseedの場合、得票したTPが全体の15.59%だったので、1ラウンド6時間当たりのVote Rewardは、

Sesamiseedの1ラウンド当たりのVote Reward:

  115,200TRX × 15.59% = 約17,960TRX

同じ状況で1年間スーパー代表を続けたとすると、年間のVote Rewardは、

Sesamiseedの年間Vote Reward予測:

  約17,960TRX/1ラウンド × 1,460ラウンド/1年 = 約2,622万TRX

となります。

Block Reward
定員27のスーパー代表に選出され、ブロックの生成を行った場合に得られる報酬

Block Rewardは、27位までのスーパー代表に選出され、トランザクションを認証するブロックを生成したことに対して配布される報酬です。
1ラウンドあたり、総量230,400TRXを27のスーパー代表で分割。
ただし、ネットワークのコネクションの問題等でブロックの生成に参加できなかった場合の分が、若干報酬から引かれますが、小さいので今回は無視しましょう。
その場合の1ラウンド6時間当たりのBlock Rewardは、

Sesamiseedの1ラウンド当たりのBlock Reward:

  230,400TRX ÷ スーパー代表数27 = 約8,533TRX

同じ状況で1年間スーパー代表を続けたとすると、年間のBlock Rewardは、

Sesamiseedの年間Block Reward予測:

  約8,533TRX/1ラウンド × 1,460ラウンド/1年 = 約1,246万TRX

となります。

Sesamiseedが現在の状態を1年間続けたとすると、年間で以下の報酬を得ることになります。

Sesamiseedの年間Reward予測:

  年間約Vote Reword 約2,622万TRX × 年間Block Reword 約1,246万TRX

    = 3,836万TRX

投票者に配布されるTRXの量

スーパー代表の候補者のいくつかは、スーパー代表に選出された場合に、自分に対して投票してくれた投票者に対してどの程度の報酬を配布するかを宣言しています。

2019年5月の時点でそういう宣言をしている候補者のいくつかを挙げてみると…

Sesamiseed
Sesamiseedが受けたスーパー代表としての報酬の80%を、投票してくれたTPに応じた比率で配布
BitGuild
BitGuildが受けたスーパー代表としての報酬の115%を、投票者に配布。BitGuildのコミュニティの成長促進のため、BitGuildが受ける報酬以上を配布する。
CryptChain
CryptChainが受けたスーパー代表としての報酬の80%を、投票者に配布。

こんな感じ…

例えば、10,000TRXをフリーズして10,000TPを得て、これを全部Sesamiseedに投票したとします。
その時の1ラウンドに得られる報酬を計算してみると…

Sesamiseedに10,000TP投票した場合の1ラウンド当たりの報酬:

  Sesamiseedが得る1ラウンドあたりの報酬 約26,700TRX × 還元率80%

    × (投票TP数 10,000TP ÷ Sesamiseed総獲得TP数 約13億TP)

      = 約0.164TRX

年間で計算すると

Sesamiseedに10,000TP投票した場合の年間報酬予測:

  1ラウンドあたりの報酬 約0.164TRX × 1,460ラウンド/1年 = 約239TRX

年2.4%の報酬ということになります。
候補者ごとに条件は違いますので、条件の良い候補者を選べば、1年で投票したTPの5%を超える報酬が得られます。

狙い目の候補者の条件は?

では、どの候補者が狙い目なのでしょう?

スーパー代表としての責務をきっちりと果たしてくれる候補者であることは、もちろん大前提。
でも、どうせ投票するならなるべく報酬が多いほうを選びたいのが人情です。

投票者に対する報酬という観点で投票先の候補者を選ぶ場合のポイントを、以下で解説しましょう。

スーパー代表選びのポイント1
安定的にスーパー代表に選出されること

まず、これが第一です。

スーパー代表に対する報酬のうち、Vote Rewardは127位まで、Block Rewardは27位までの得票数の候補者が獲得します。
ここに入っていないと、投票者に配布する報酬の原資がありません。

スーパー代表の投票結果を数日眺めて、安定的にスーパー代表に選出されている候補者を選ぶことが必須になります。

スーパー代表選びのポイント2
投票者に対する高い報酬率を宣言していること

すべての候補者が、投票者に対して報酬の配布をしているわけではありません。
また、報酬の配布率は候補者ごとに異なります。

各候補者の情報をtronscanの「TRONスーパー代表」のタブで確認し、高い率の報酬の配布を宣言している候補者を探しましょう。

スーパー代表選びのポイント3
TPの得票率が低いこと

スーパー代表が得る報酬のうち、Vote Rewardは得票率に応じて傾斜配分されます。
これに対してBlock Rewardは、得票率に無関係に同じTRXの量です。

ということは、得票1TPあたりの報酬は、得票率の低いスーパー代表のほうが有利。
その結果、得票率の低いスーパー代表に投票するほうが、投票者は多くの報酬を期待できるのです。

この点、ポイント1との兼ね合いで考えなければなりません。
得票率が低い候補は代表になれない可能性が高まりますので、頃合いのよい得票率の候補者を選ぶのがコツです。

結局ステーキングで稼げるのか?

以上で検証したように、TRONのスーパー代表選の投票で、そこそこの報酬が得られることがわかりました。

私も実際に試してみましたが、得票率3%前後で投票者への報酬率80%を宣言している候補者へ投票したところ、1日当たりTPの0.016%程度のTRXがドロップしてきます。
年にすると5.84%
悪くない数字ですよね。

買ったはいいが、使う予定もなく寝かしとくだけのTRXを持っているなら、とりあえずフリーズして投票しておくというのは、アリだと思います。

ただし、ボラティリティの高い仮想通貨の世界。
通貨自体の価値の上下動が激しいので、そこに対する注意を怠ると火傷します。

フリーズしても気を抜かない。
それを忘れなければ、仮想通貨を使って仮想通貨を稼ぐステーキングは、悪くない選択肢です。