先日、「ビットコインで久々のゴールデンクロス発生!!」のニュースが入ってきました。
ゴールデンクロスは、相場のテクニカル分析でよく出てくる価格の移動平均に関する現象で、価格の長期の移動平均を短期の移動平均が超える現象です。
一般的には、市場が強気の相場に転換し、上昇トレンドが発生する際の予兆のように考えられており、仮想通貨だけでなく、株や外為でも使われる標準的な市況判断の方法です。
今回は、ビットコインの200日の長期の移動平均を50日の移動平均が超えました。
2018年頭のピークからの急降下以来初の現象で、
「ビットコインも上昇トレンドに転換したかも!!」
って感じで、ポジティブな材料として取り上げられています。
まあ、ポジティブな材料が増えるのはいいことなんですが、ゴールデンクロスってそんなにすごいことなんでしょうか?
単純に信じて馬鹿を見るのは、勘弁願いたい!!
そういう方のために、今日はゴールデンクロスについて掘ってみたいと思います。
目次
ゴールデンクロスって何?
今回のゴールデンクロスを見てみましょう。

BTC/JPYのゴールデンクロス jp.tradingview.comより
この図で、2019年の4月の後半に、赤い線と紫の線が交差しています。
これがゴールデンクロスです。
赤い線はBTC/JPYの200日移動平均線
紫はBTC/JPYの50日移動平均線
50日移動平均が200日移動平均を超えたことでゴールデンクロス成立です。
移動平均とは?
価格の移動平均は、株や為替でも使われる標準的な分析手法です。
ある時点の移動平均は、その時点を起点に、一定時間の間の過去の価格を平均した値です。
例えば、5月1日のBTC/JPYの5日移動平均は、
(5月1日のBTC/JPYの価格 + 4月30日の価格 + 4月29日の価格 + 4月28日の価格 + 4月27日の価格)÷ 5
となります。
これを各日に対して計算し、それを線でつないだものが、5日移動平均線となります。
どんな時間間隔でも移動平均は計算できます。
1時間でも、1日でも、
10日でも、100日でも…
また、為替でも株でも、どんなものでも価格のあるものであれば移動平均は計算できます。
移動平均の使い道
移動平均線を使って、価格推移のトレンドを見ることができます。
短い期間の移動平均線であれば短期のトレンドを、長い期間の移動平均線であれば長期のトレンドを把握することができます。

ユーロ/ドルの5日・20日・120日移動平均線 fx.minkabu.jpより
この図は、ユーロ/ドルのチャートです。
日々の価格推移とともに、5日移動平均線(緑)、20日移動平均線(赤)、120日移動平均線(青)が表示されています。
移動平均の特徴をいくつかまとめておきましょう。
移動平均の計算方法からもわかるように、現在の価格とそれ以前の価格を平均しますので、その数値は現在の価格の動きと比較して遅く変化します。
結果として、移動平均線は、価格のチャートの動きを遅れて追うような動きをします。
この遅れの度合いは、どのぐらいの期間を平均するかによって異なります。
短い期間の移動平均線は価格のチャートをすぐに追いかけます(例えば、上図の5日移動平均線)。
これに対して、長い期間の平均をとる移動平均線は、チャートの変化に即応しません。
長期間の移動平均線は長期トレンド、短期間の移動平均線は短期的なトレンド
移動平均線は、現在の価格に追従するよりも、上げ相場か下げの局面なのか、といった市場のトレンドを見るためのツールです。
短期間の価格の平均をとる移動平均線は短期的なトレンドを、長期間の平均をとる移動平均線は長期的なトレンドを示します。
上のユーロ/ドルの例であれば、5日移動平均線を見えれば短期的な上げ下げが分かりますが、120日の移動平均線を見ると、長期的には下げトレンドの最中であることが分かります。
下降トレンド時にはその逆。
移動平均は遅行性のある数値です。
価格が一時的に下がったからといって、移動平均は即座には下がりません。
価格が上がった場合にはその逆。
その結果、価格の上昇トレンドにおいては、価格より移動平均が下にある場合が多くなります。
特に、平均の期間が長い移動平均程、価格より大きく低い位置にあることが多い。
価格の下降トレンドにおいては、この逆。
価格より移動平均が上にある場合が多くなります。
先程の、ユーロ/ドルのチャートの例でいえば、長期的には下降トレンドにあるので、120日移動平均は日々の価格の上にあることがほとんどです。
では、明確なトレンドがないレンジ相場ではどうなるか…
その場合は、価格と移動平均線が同じ水準で、団子状態になって推移することになります。
ゴールデンクロスとは? その意味は?
ゴールデンクロスは、短期間の平均をとる移動平均線が、より長期間の移動平均線を、下から上に超えることを言います。
多くの場合、ゴールデンクロスは長期的な下降トレンドの状態で起こります。
長期的な下降トレンドでは、長期間の平均をとる移動平均線は右肩下がりとなり、短期間の移動平均線は長期間の移動平均線の下にあります。
この状態でトレンドが上昇へと転換した場合、どうなるか…
短期間の平均をとる移動平均は、価格の変動に比較的早期に反応するため、上昇を始めます。
これに対し長期間の移動平均は、遅行性が強いため即座には反応せず、下降を続けます。
その結果、短期移動平均が長期移動平均を超える…
ゴールデンクロスが発生します。
今回のビットコインの例では、2019年4月に入ってからのBTCの価格上昇に50日移動平均が反応して上昇したのに対し、200日移動平均はまだ反応しない状態のまま。
このため、ゴールデンクロスが発生したのです。
このようなメカニズムで発生する現象ですから、ゴールデンクロスは、下降トレンドから上昇へとトレンドが変化することの予兆だと思われています。
暗く長い下降トレンドから抜けて、やっと上昇へ…
耐える相場から、やっと買いを入れられる状態への転換。
「ゴールデン」の名の通り、ハッピーな現象と考えられているのです。
ゴールデンクロス… ほんとうに信じていいのか?
これまで説明したところを見れば、なんとなく納得してしまいます。
ゴールデンクロスが発生したなら買ってしまえ、と考えがち。
でも少し待ちましょう。
世の中そう単純ではないはずです。
ゴールデンクロスの頻度やタイミングは、平均する期間によって変わる
移動平均は、平均する期間を変えれば値が変わってしまう数値です。
最初のBTC/JPYのチャートでは、200日と50日の2本の移動平均線を使用しましたが、これを100日と20日の線に変えてみましょう。

BTC/JPYのゴールデンクロス(100日・20日移動平均線) jp.tradingview.comより
最初のチャートでは2019年4月の後半だったゴールデンクロスが、2019年3月の半ばに代わっています。
平均する期間によって変わるのはゴールデンクロスが発生する時期だけではありません。
移動平均は、平均する期間が短いほど上下動が激しいので、ゴールデンクロスが発生する頻度も多くなります。
平均する期間の長さによって発生するかどうかが変わってしまうあやふやな現象…
これがゴールデンクロスです。
クロスが発生してもトレンドが転換しないことも多い
先程の100日・20日の移動平均線つきのチャートを見ると、2018年の8月にもゴールデンクロスが発生しています。
しかもこの時は、大きな上昇トレンドにはならず、すぐにまた値が下がっていきました。
ゴールデンクロスが発生しても、上昇トレンドが形成されるわけではない!!
これが厳然たる事実…
一時的に値が上がりゴールデンクロスが発生しても、直後に下げに転じることはよくあります。
下降トレンドから上昇トレンドに転換するときには、ゴールデンクロスが発生することが多いことは確かです。
しかし、ゴールデンクロスが発生したら上昇トレンドに転換する、というのは真ではありません。
まとめ
今日は移動平均線のゴールデンクロスについてお話ししました。
ゴールデンクロスになったから上昇トレンドだ!!
ていうような単純なものではないとわかっていただけたでしょうか?
まあ、そんなに簡単であったら投資で損する人はいないんですが…
ゴールデンクロスの逆で、短期間の移動平均線が長期の移動平均線を、上から下に交差することをデッドクロスと言います。
こちらは、上昇トレンドが終わり、下降トレンドが始まるサインだとされています。
ですが、信用できる程度はゴールデンクロスと同じ。
どのサインを信じるかはあなた次第です。