Proof of Stakeは金のなる木か? イーサリアムがPOSに移行したら…

Proof of Stake…
仮想通貨の中でもメジャーなコンセンサスアルゴリズムです。

Stakeの意味は「賭ける」

保持している通貨の一部を賭け金とする。
多く賭けた人がマイニングに成功し、報酬をゲットする仕組みです。
保持している通貨の一部を賭けることをステークすると言います。

仮想通貨の分析データを公開しているDiarから、PoSあるいはその派生形のコンセンサスアルゴリズムを採用している通貨に関して、面白いレポートが出てきました(2019年3月18日)。

曰く…

Proof of Stake系の仮想通貨では、4,000億円分の通貨がステークされている

はて… なぜみんなそんなにステークする?

ステークするとマイニング報酬がそんなに入るのか??

じゃ、イーサリアムがPoWからPoSに移行したら、私が持ってるETHは、金のなる木になってくれるのか?!

と、あれこれ気になってきましたので、今日はこのあたりを深堀しましょう。

コンセンサスアルゴリズムとProof of Stakeについて振り返り

まずは、コンセンサスアルゴリズムとProof of Stakeについて、軽く振り返っておきましょう。

「コンセンサスアルゴリズム」は、利害関係の異なる複数が合意形成をする仕組みのこと。
仮想通貨では、ほっとくとブロックチェーンがどんどん分岐していってしまいます。
そのため、どのチェーンが正しいかをみんなで決めなければなりません。
このための合意形成の仕組みがコンセンサスアルゴリズムです。

最初のコンセンサスアルゴリズムはProof of Work

最初の仮想通貨はビットコインですね。
そのコンセンサスアルゴリズムは、PoW:Proof of Workと呼ばれます。
多くの仮想通貨が採用しているスタンダードなアルゴリズムのひとつ。

ブロックチェーンに新たなブロックをつなげていく作業をマイニングと呼びます。
マイニングに成功して新たなブロックをブロックチェーンにつなげば、報酬としてビットコインがもらえる仕組み。
報酬は早い者勝ち。
マイニングには複雑な計算が必要になりますが、報酬目当てに計算を全世界のマイナーが競争で行います。

そうして、最も長くつながったチェーンを正しいもの決まる。
別のチェーンを長くつなげていくためには、世界中のマイナーのすべてを凌駕するコンピューティングパワーが必要。
だからこそ不正ができない
という仕組み。

しかし、PoWでは、膨大な計算量と電力量を必要とする。
マイニングの報酬を得るために、大規模な設備投資を行い、昼夜を問わず計算し続けます。
その結果として、ビットコインのマイニングで世界中で使われている電力量は、ヨーロッパの小さめの国の電力消費量に匹敵するそうな…

このあたりの事情は、以下でまとめています。

マイニングの消費電力、ビットコインの将来が気になる【仮想通貨小耳ネタ】

Proof of Stake

PoWは、たくさん計算した人がマイニングに成功しやすい仕組みでした。

これに対して、たくさんの通貨を賭けた人がマイニングに成功しやすい仕組みが、PoS:Proof of Stake。
膨大な電力消費などのPoWの問題点を解消するために、考えだされました。

やはりマイニングに成功すれば、通貨が報酬としてもらえます。
でも、マイニングに成功するのはたくさん計算した人ではなく、多くの通貨をステークした人。
多くの通貨を保持し、そのうちの多くを賭けた人が、たくさん報酬がもらえる確率が上がる。

競争で計算をする必要がないので、PoWのような大規模な設備投資や膨大な電力消費は不要な仕組みです。

PoSにはいくつかバリエーションがあります。

単なるステークした通貨量ではなく、その通貨のネットワークに対する重要度で、マイニングの成功確率を決めるProof of Importance

通貨の保持者による保持量に応じた投票で複数の代表者を選び、その代表者によってマイニングが行われるDelegated Proof of Stake

このあたりの比較は、以下にまとめています。

氾濫するProof of Xをここらでまとめて解説 コンセンサスアルゴリズム編(PoW, PoS, PoI, DPoS)

イーサリアムのハードフォークとコンセンサスアルゴリズム

イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムは、今のところPoW。
ですが、いずれPoSに移行することを宣言しています。

イーサリアムは、計画的なハードフォークによるバージョンアップにより、機能と性能を向上させるのが特徴。
4つのメジャーなバージョンが計画されており、現在はMetropolisです。

  • Frontier  2015年6月30日稼働
  • Homestead  2016年3月14日稼働
  • Metropolis
    2017年10月16日 第1弾 Bizantium実施
    2019年3月1日 第2弾 Constantinople実施
  • Serenity  未計画

Metropolisへの移行は2段階に分割され、2017年10月16日に1段階目のByzantiumを実行。
そして2019年3月1日に2段階目のConstantinopleが終了しました。
ですが、PoSへの移行は、いまだ完了していません。

現時点では、コンセンサスアルゴリズムのPoSへの移行は、どの時点のハードフォークで実施されるかは明言されていない。
ですが、PoSの具体的な内容の検討も進んでいますし、PoSへスムーズに移行するための仕掛けであるディフィカルティボムも動いています。

近い将来必ずPoSへ移行するでしょう。

※イーサリアムのハードフォークとディフィカルティボムについては、以下で解説しています。

イーサリアムのディフィカルティボム ハードフォークの今だからこそちゃんと解説

イーサリアムがPoSに移行したら…

では、イーサリアムがPoSに移行したら、どの程度の利回りでマイニング報酬が入るのかを、シミュレーションしてみましょう。

見積り方の概略は以下の通り…

ステークされたETHの年間利回り予測値 =
  イーサリアムの年間総マイニング報酬 ÷ ETH総ステーク量予測値

イーサリアムの年間総マイニング報酬

イーサリアムのマイニング報酬は、大きく2つから構成されます。

  • 取引履歴の承認に対する手数料
  • マイニング成功時にマイナーに新規発行されるETH

上記がどのぐらいの数字になるかは、Etherscanで公開されているデータから拾うことができます。
EtherscanからはCSV形式でデータがダウンロードできるので、いろいろ計算してみることができます

取引履歴の承認に対する手数料

取引履歴の承認に対する手数料は、個々の取引が設定するので、ブロック毎に異なります。
必然的に、1日当たりの総手数料も毎日変わります。

イーサリアムの取引承認手数料総額の推移

イーサリアムの取引履歴の承認手数料総額の推移  Etherscan.ioより

この図は、1日当たりのイーサリアムの取引履歴の承認手数料の推移です。

Constantinopleハードフォーク後の2019年3月9日から3月22日までの2週間で平均をとると、
1日あたりの手数料総額は、528.5ETHとなります

マイニング成功時にマイナーに新規発行されるETH

マイニング成功時にマイナーに新規発行されるETHの量は決まっています。

以前は1ブロックあたり3ETHでしたが、Constantinopleハードフォーク後は、1ブロックあたり2ETHに減額されています。

さらにイーサリアムでは、正規のチェーンの一部と認めらたブロック以外にも、そのuncle (親ブロックの兄弟ブロック)やnephew(uncleの子ブロック)にも一定のETHが新規発行されますので、正確な報酬の量はよくわからなくなっています。

そこでやはりEtherscanからデータを拾いましょう。

イーサリアムのマイニングによる新規ETH発行量の推移 

イーサリアムのマイニングによる新規ETH発行量の推移  Etherscan.ioより

この図は、一日あたりのマイニングによる新規ETH発行量の推移です。

手数料と同じく、Constantinopleハードフォーク後の2019年3月9日から3月22日までの2週間で平均をとったとすると、
1日あたりのマイニングによって新規発行されるイーサリアムの総額は、13,625.2ETHとなります。

年間のマイニング報酬額

上記の計算から、年間のマイニング報酬額を計算します。

1日当たりのマイニング報酬額は、528.5ETH + 13625.2ETH = 14,153.7ETH

年間はこれを365倍して、約5,166,100ETHとなります。

ステークされたETHの年間利回り予測

ステーキングされたETHの利回り予測は、どのぐらいのETHがステーキングされるかによって変わります。
イーサリアムはまだPoSに移行してませんから、この数値は予測するしかありません。

2019年3月23日時点のイーサリアムの発行総数は、105,348,474ETHです。

仮にこれの20%がステークされるとすると、年間利回り予測は、

5,166,100ETH ÷ 105,348,474ETHの20% = 0.245

年利24.5%
結構いきますね…

50%がステークされるとすると、年利9.8%
これも悪くない数値です。

この数字が正しければ、現物をガチホして寝かしておくぐらいならステークしておくのが良い感じ…

ステークってほんとにそんなに稼げる?

ここまでの計算では、ステークはなかなか魅力的な戦略に思えます。
ですが、いくつかネガティブな可能性もあります。

マイニング報酬は減っていくかも…

イーサリアムのマイニングによるETHの新規発行量は、2019年3月現在で1ブロック当たり2ETHです。

ですが、2019年3月1日のConstantinopleハードフォーク以前は、3ETHでした。
さらに言えば、2017年10月Bizantiumハードフォーク以前は、5ETHだった。

前出のイーサの新規発行量の推移のチャートで、大きく発行量が減少しているのが、この2回のハードフォークの影響です。

イーサリアムのコミュニティは、ハードフォークの際にディフィカルティボムの進行を遅らせるとともに、マイニング成功時の新規発行額を減らしています。
多額のETHが長期にわたって新規発行され続けることによる、価値の減少を抑えるため…

この方針は、今後も継続する可能性が高いと思われます。
PoSに移行した場合には、マインニングによるETHの新規発行は行われなくなるかもしれません。

その場合、マイニング報酬は取引履歴の承認に対する手数料のみとなります。
ステークの利回りは大きく減ることになります。

実際の利益はETHの価格に依存する

ここまでの計算は、ETHのステークによりETHがどの程度増えるか、という観点で議論しています。

ですが、USDやJPYなどの法定通貨ベースの利益を考える場合、将来にわたってのETH/USD、ETH/JPYの推移が大きく影響します。

ここまで考えると、ステークもそうそう儲かる話ではないような気がしてきました。
この世の中、金のなる木はないよっていうことなのかもしれません。