ビットコインとイーサリアムをつなぐWBTCローンチ その仕組みとインパクト

ビットコインにペグした、ERC20ベースのトークンWBTC(= Wrapped Bitcoin)立ち上げのニュースが、2018年10月26日にありました。

ローンチは2019年1月と予告されていましたが、その通り1月末にローンチされました。
※この業界、予定通り進むプロジェクトが少ないので、なかなかに立派!!

WBTCの登場は、単に、新しいステーブルコインが一つ増えたということではありません。
これまで別々であったビットコインとイーサリアムのエコシステムが相互に乗り入れることを可能にする、画期的な試みです。

時間が年単位で経過した後に、振り返ればあれが重要なポイントだったなと思うことになる出来事かもしれません。

今日は、そんなWBTCについて、お話しします。

WBTCとは?

WBTCは、Wrapped Bitcoinの略。
イーサリアムネットワーク上のERC20ベースのトークンで、ビットコインと1対1でペグしているステーブルコインです。

仮想通貨のカストディサービスを提供しているBitGO、イーサリアムネットワーク上で分散型取引所を運営しているKyber Network、Dark PoolのRenなどが中心となったコミュニティで進められてきたプロジェクト。

WBTC

https://www.wbtc.network/

このプロジェクトがやろうとしていることは、イーサリアムのネットワークの中でビットコインを流通させようという試みです。

BTCそのものをイーサリアムのネットワークに持ち込むことはできません。
そこで、BTCの代替品のトークンをERC20ベースで作り、これをイーサリアムネットワーク中で流通させよう…
そうしてつくられたトークンがWrapped Bitcoin = WBTCです。
ビットコインは、ビットコインネットワークとイーサリアムネットワークを行き来しますが、ビットコインネットワーク上ではBTC、イーサリアムネットワーク上ではWBTCとして流通します。

ビットコインが、双方のネットワークを行き来することを可能にするためには、以下の2点を満たす必要があります。

  • BTCとWBTCの価値の等価性を保証すること
  • 双方のネットワークを行き来することで、ビットコインの数量が増えたり減ったりしないこと

これを実現するために、

  • ビットコインネットワークからイーサリアムネットワークへのビットコイン移動時は、BTCを凍結して、同量のWBTCを発行する。
  • 逆方向の移動時は、WBTCをバーン(= 焼却)して、同量のBTCの凍結を解除する。
という、方法をとっています。

WBTCがもたらすインパクト

WBTCによって、ビットコインとイーサリアムのネットワークがつながります。
単にビットコインのペグ通貨が一つできた、という事実以上の大きなインパクトを持つ可能性大。

ビットコインネットワークにとってのインパクト

ビットコインは、突出して大きな仮想通貨ネットワークですが、その最大の課題は、アプリケーションが金銭的な価値の保有手段に特化していること。
人が行う日々の活動との直接的なかかわりが薄く、金のように、単なる投資対象か、保持して金庫にしまっておくものになりがち。

これに対しイーサリアムは、スマートコントラクトにより様々なアプリケーションを実現できる、エコシステム。
人の営みに直接的にかかわるアプリケーションを提供するための仕組みです。

WBTCは、ビットコインにスマートコントラクトの機能を持ち込み、様々なアプリケーションを実現を可能にする手段となります。
アプリケーションをイーサリアムのネットワーク上のDAppsとして準備して、WBTC経由でビットコインを持ち込むということが可能に…
ビットコインが流通するゲーム・SNS・保険・DEX・ICO/STOなどなどなどが実現します。

ともすると「何に使えるの?」という疑問に答えきれず、「金に近い位置づけ」とかもっともらしいことを言ってごまかすしかなかったビットコインの前に、新たな天地が広がるかもしれません。

イーサリアムネットワークにとってのインパクト

ビットコインはとても大きな仮想通貨ネットワークです。
2019年2月の時点で時価総額は、イーサリアムの5倍以上。
仮想通貨のなかで突出したの規模と知名度、流動性と安定性を持ちます。

WBTCによって、イーサリアムのエコシステムにビットコインとそのユーザーが流れ込む。
イーサリアムネットワーク上の様々なアイデアに、ビットコインの流動性と安定性が付与される可能性がでます。

イーサリアム上で新しいアイデアを実現するときに、ビットコインの規模と流動性をあてにできるのは、とても有利。
単純に言えば、イーサリアム上にアプリケーションを作れば、その5倍の市場を相手にしたことになるかもしれません。

もちろん、WBTCが十分に流通して、BTCを使うこととWBTCを使うことの差を意識しない状態になれば、の話ですが…

WBTCの仕組み

WBTCがBTCにペグする仕組みの詳細は、WBTCのホワイトペーパーに記載されています。
その内容を概観しましょう。

WBTCの仕組みに登場するプレーヤー

WBTCの仕組みには、以下の3種類のプレーヤーが登場します。

カストディアン

BTCを凍結し、同じ数量のWBTCを生成する役割。
この行為を鋳造と言います。
鋳造ができるのはカストディアンだけ。

マーチャント

カストディアンとカスタマーの間を仲介する役割。
カスタマーから、BTCとWBTC間の交換の依頼を受け付け、カストディアンに要求して交換を実行します。
カストディアンと直接やり取りできるのはマーチャントのみ。

カスタマー

WBTCの利用者。
マーチャントに依頼して、BTCをWBTCに交換してWBTCを得たり、WBTCからBTCを得たりします。

 

WBTCの仕組み

WBTCの仕組み  WBTCホワイトペーパーより参照

WBTCの鋳造

WBTCの鋳造は、マーチャントの依頼により、カストディアンによって行われます。
手順の概略は以下の通り。

WBTCの鋳造手順

  1. 「WBTCを生成し、イーサリアムネットワーク上のマーチャントのアドレスに送る」ことを、マーチャントがカストディアンに依頼
  2. マーチャントがカストディアンに、BTCを送付
  3. カストディアンは、BTCの送付がビットコインネットワーク上で承認されるまで待つ
  4. カストディアンはBTCと同量のWBTCを作成し、イーサリアムネットワーク上のマーチャントのアドレスに送付

カストディアンは、マーチャントから送付されたBTCを流通させることなく、保持します。

BTCの償還

WBTCをBTCに戻す時には、WBTCをバーン(=焼却)し、同額のBTCがカストディアンから放出されます。

BTCの償還手順

  1. マーチャントがWBTCをバーン(=焼却)
  2. カストディアンは、WBTCのバーンがイーサリアムネットワーク上で承認されるまで待つ
  3. カストディアンは、保持しているBTCのうち、バーンされたWBTCと同量のBTCを、ビットコインネットワーク上のマーチャントのアドレスに送付

上記の手順によって以下の2点が守られ、WBTCとBTCの間のペグが維持されます。

  • BTCとWBTCの価値の等価性を保証すること
  • 双方のネットワークを行き来することで、ビットコインの数量が増えたり減ったりしないこと

実はこの仕組み…
ビットコインとの間だけでなく他のネットワークとの間でも使える汎用性を持っています。

ビットコインをWrappするのが最もメリットが大きいのでWBTCから入ったにすぎません。

WBTCが成功すれば、次々とWrapped **が出てきそうです。

WBTCはどこで手に入る?

WBTCを手に入れるには、主に2つの方法があります。

  • マーチャントに依頼して、BTCとWBTCを交換してもらう
  • DEX等のイーサリアムネットワーク上の取引でWBTCを得る

マーチャントの役割を持つプレーヤー、あるいは、WBTCの取引ができるプレーヤーのリストはWBTCのパートナーのページから参照できます。

2019年2月現在、マーチャントが8プレーヤー、WBTCの取引ができるのが10プレーヤー。

BTCとの間の交換もほぼ1:1。
WBTC⇔BTC間のペグは、当初の想定通り機能しているようです。