仮想通貨取引の注文方法…
前回は基礎の基礎ということで、最初に知っておくべき「成行」「指値」「逆指値」について話しました。

ここからは、もうちょっと複雑な注文方法について説明しましょう。
連動する複数の注文を組み合わせたハイブリッドタイプです。
まずは、新規の注文と、決済(利益確定、あるいは損切り)の注文の、一連の注文を同時に出すIFDからです。
目次
IFD注文って何?
IFDは、if doneの略です。
「もし A が実行されたら B」のような、AとBの2つの注文から構成される複合的な注文です。
仮想通貨の取引の基本パターンに即した注文方法ですので、あなたが頭に描く売買シナリオを反映しやすいのが特徴です。
取引の基本パターンは新規注文+決済注文
仮想通貨の取引には様々なパターンがありますが、基本的に2つの売買からなります。
後に通貨の価格が上がることを見越して、価格が安いときに通貨を買いを入れます。
そして、時間がたって、もくろみ通り価格が上がったら、買っていた通貨を売って、差額を利益として受け取る(=利確)。
もしかすると、意に反して価格が下がり、取引を手じまいしたくなったら、やはり買っていた通貨を売ります。
この時は、残念ながら損失が出ます(=損切り)。
どちらにしても、最初の買いの注文(新規注文)、と、それに続く、売りの注文(決済注文)、で完結。
これがパターン1です。
信用取引の場合は、仮想通貨の売りから入って買い戻す売買もあります。
後に通貨の価格が下がることを見越して、価格が高いときに通貨を売ります。
そして、時間がたって、もくろみ通り価格が下がったら、売っていた通貨を買い戻して、差額を利益として受け取る(=利確)。
残念ながら価格が上がってしまい、取引を手じまいしたくなった時も、やはり通貨を買い戻します。
これは残念ながら損失です(=損切り)。
最初の売りの注文(新規注文)、と、それに続く、買いの注文(決済注文)、で完結。
これがパターン2。
どちらのパターンでも共通しているのは、新規注文と決済注文の2つからなる。
より複合的な様々なパターンはありますが、これが基本形です。
IFD:新規と決済の2つの注文を同時に発注
IFD注文は、一度の注文で新規注文と決済注文を同時に発注するやり方です。
一度発注してしまえば、注文した顧客から停止や変更が入らない限り、新規注文の実行から決済注文の実行まで、自動的に行われます。
IFD注文は、仮想通貨取引の基本パターンに従って発注する仕組みですので、買いと売りがペアになった以下の2パターンがあります。
新規注文 | 決済注文 | |
パターンA | 買い | 売り |
パターンB | 売り | 買い |
さらに、新規・決済それぞれの売買注文に、指値と逆指値のバリエーションがありますので、IFD注文の詳細なパターンは8種類となります。
IFDの注文例と新規と決済の注文が実行されるタイミングについて、例を挙げて説明しましょう。
IFD注文の例1 新規注文:指値買い+決済注文:指値売り
まず最初の例は、買い注文から入って売り注文で決済する例です。
新規注文、決済注文とも指値です。
決済注文:1BTC=51万円で5BTC指値売り(利確)
49万円で買い、51万円で売りますので、この決済注文は利確のためのものです。
この場合の新規および決済注文の実行のタイミングを図示したのが、下図です。

IFD注文の注文実行タイミングの例1 指値買い→指値売り(利確)
図に沿って動きを説明してみます。
- STEP.1IFD注文発行顧客の指示でIFD注文が発行されます。
発行後、即座に、新規注文が実行するタイミングを待つ状態に入ります。
また、この時点では決済注文については、まだ何もしません。 - STEP.2新規注文の実行待ち新規注文を実行するための条件が満たされるのを待ちます。
この例では、新規注文が「1BTC = 49万円の指値買い」ですから、1BTCの価格が49万円以下になるまで待ちます。 - STEP.3新規注文の実行新規注文の実行条件が満たされたら、新規注文を実行します。
この例では、1BTCが49万円以下になったところで、5BTCを買います。
同時に、決済注文を実行するタイミングの待ちに入ります。 - STEP.4決済注文の実行待ち決済注文を実行するための条件が満たされるのを待ちます。
この例では、決済注文が「1BTC = 51万円の指値売り」ですから、1BTCの価格が51万円以上になるまで待ちます。 - STEP.5決済注文の実行決済注文の実行条件が満たされたら、決済注文を実行します。
この例では、1BTCが51万円以上になったところで、5BTCを売ります。
IFD注文の例2 新規注文:逆指値買い+決済注文:逆指値売り
次の例も、買い注文から入って売り注文で決済します。
ただし、今度は新規注文、決済注文とも逆指値です。
決済注文:1BTC=49万円で5BTC逆指値売り(損切り)
決済注文の逆指値は、思う方向とは逆に価格が動いた場合に、損切りして、被る損失を限定するために使われます。
50万円で買ったものを49万円で売るのですから、損失を出すことが確定している注文であり、意味がないように思えますが、事前に損失の幅を許容範囲内に固定しておくという意味では、賢いIFD注文の使い方です。
上記の例の新規および決済注文の実行のタイミングを図示したのが、下図です。

IFD注文の注文実行タイミングの例2 逆指値買い→逆指値売り(損切り)
新規注文の「1BTC=50万円で逆指値買い」は、1BTCが50万円より安い状態から上昇し、50万円以上になった時に実行されます。
決済注文の「1BTC=49万円で逆指値売り」は、1BTCが49万円より高い状態から下降し、49万円以下になった時に実行されます。
IFD注文の例3 新規注文:逆指値売り+決済注文:指値買い
次の例は、売り注文から入って買い注文で決済します。
新規注文は逆指値、決済注文は指値です。
決済注文:1BTC=49万円で5BTC指値買い(利確)
51万円で売って、49万円で買い戻しますので、この決済注文は利確を目的としたものです。
この例における新規および決済注文の実行のタイミングを図示したのが、下図です。

IFD注文の注文実行タイミングの例3 逆指値売り→指値買い
売りから入ってもIFD注文の仕組みや、注文が実行されるタイミングの決まり方は同様です。
IFD注文のメリット
IFD注文がどういうものか分かったところで、次はIFD注文のメリットを説明していきましょう。
IFD注文のメリット1 値動きを監視する必要がない
IFD注文は、新規の発注から決済まで、顧客の事前の指示に従って自動で実行します。
顧客は、通貨の値動きを自分で監視し続ける必要はありません。
値動きをリアルタイムで監視し続けるのは、根気のいる仕事です。
あなたが想定する売買のタイミングがいつ来るかはわかりませんので、常にチャートの前で身構えている必要があります。
数秒から数分で決済までの取引を終えるスキャルピングであれば、チャートとにらめっこし続けられます。
ですが、それ以上の長い時間を必要とする取引では、ちょっと無理。
そういう時に、IFD注文のように、取引システム自身が値動きを監視し、タイミングが来たら自動的に取引をしてくれる仕組みは、とても有用です。
IFD注文のメリット2 取引の戦略を立てる必要がある
IFD注文を出すためには、注文を出す前に、新規の取引から、決済による利確あるいは損切りの計画を立てておくことが必要になります。
これは、仮想通貨取引の初心者にとっては、とても重要なことです。
まずいのは、取引に対する明確なシナリオを持たずに、なんとなく売買を始め、なんとなく決済してしまうパターンです。
このやり方でも、うまくいくときもあります。
ですが、うまくいかないときももちろんあります。
そして、多くの場合はうまくいくパターンに再現性がなく、複数の取引をトータルでみればマイナスとなります。
本来であれば、
売買にはいる前にどこまで下がったら買いを入れ、
どこまで上がることを見込み、
どこまで上がったら利確するのか?
あるいはどこまで下がったら、損切りするのか?
といったシナリオを事前に検討し、それに従って取引をし、再現性のある勝ち方を見つけていく必要があります。
IFD注文は、新規注文と決済注文の価格を事前に決定しなればなりませんので、あなたが事前に取引のシナリオを考えることを習慣づけてくれます。
IFD注文のメリット3 事前に立てた戦略に従った取引ができる
人の心は弱いものです。
特に仮想通貨のリアルタイムの値動きに対しては…
価格が上がっていけば、もっと上がるのではないかと思い、
下がっていけば、どこまでも行くのではないかと思い、
目の前に繰り広げられている値動きを必要以上に重く見て、
もともと持っていた取引のシナリオを忘れて、売買をしてしまいます。
IFD注文は、こういった人間の弱さをカバーしてくれます。
特に損切りの時に、その力は発揮されます。
人は、含み損に鈍感です。
逆に決済によって確定する損益に対しては、とても敏感。
ずるずると損切りを遅らせてしまい、傷を大きくしてしまいがち。
タイムリーな損切りは、仮想通貨の取引において最も難しいことの一つです。
IFD注文により、損切りのための注文を決済注文として設定しておけば、この問題を回避できます。
「IFD注文の使いどころは損切りにあり」、と言い切ってもよいかもしれません。
IFDの発注方法 - GMOコイン、DMMBitcoin –
IFD注文の使いどころがわかったところで、次は実践。
仮想通貨交換所の取引での、IFD注文の発注方法について、お話しします。
2019年1月現在、国内の仮想通貨交換所でIFD注文を出すことができるのは、GMOコインとDMMBitcoinの2か所だけ。
ここでは、それぞれの交換所の取引画面でのIFD注文の出し方について、説明します。
GMOコインでのIFD注文の発注方法
GMOコインでは、同社が行っている仮想通貨取引サービスのうちの、仮想通貨FXで、IFD注文を出すことができます。
GMOコインの仮想通貨FXは、レバレッジを効かせて通貨の売買を行うことできます。
扱う通貨は、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)、リップル(XRP)の5種です。
ログイン後、仮想通貨FXの取引画面に移動すると、下記のような注文の画面が出ます。
IFD注文のために入力する必要のある項目には、ナンバーを入れました。

GMOコインのIFD注文例 coin.z.comより参照
この画面で、入力する必要があるのは以下の項目です。
③~⑥が新規注文に関する設定、⑦~⑨が決済注文に関する設定です。
- 取引する通貨ペアの選択
- 注文タイプの選択
ここで「IFD」を選択します - 新規注文が、「買い」か「売り」かを選択
この選択に応じて、決済注文の「買い」or「売り」が決まります - 新規注文で発注する通貨の量
- 新規注文が、「指値」か「逆指値」かを選択
- 新規注文の取引価格
- 決済注文で発注する通貨の量
- 決済注文が、「指値」か「逆指値」かを選択
- 決済注文の取引価格
- この取引のレバレッジ
これらの項目を入力し、下の「確認画面へ」のボタンを押して、確認画面へ移行。
問題がなければ、「確認」を押して、発注となります。
※レバレッジや証拠金に関しては、こちらにまとめています。

DMMBitcoinでのIFD注文の発注方法
DMMBitcoinもレバレッジ取引でIFD注文を出すことができます。
取引できる通貨は、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)、リップル(XRP)、ネム(XEM)、イーサリアムクラッシック(ETC)の7種です。
ログイン後、取引画面に移動すると、下記のような注文の画面が出ます。
IFD注文のために入力する必要のある項目には、ナンバーを入れました。

DMMBitcoinのIFD注文画面 bitcoin.dmm.comより参照
この画面で、入力する必要があるのは以下の項目です。
④~⑥が新規注文に関する設定、⑦⑧が決済注文に関する設定です。
- 取引する通貨ペアの選択
- 注文タイプの選択
ここで「IFD」を選択します。 - 新規注文で発注する通貨の量
決済注文で取引する通貨量も同じになります - 新規注文が、「買い」か「売り」かを選択
この選択に応じて、決済注文の「買い」or「売り」が決まります - 新規注文が、「指値」か「逆指値」かを選択
- 新規注文の取引価格
- 決済注文が、「指値」か「逆指値」かを選択
- 決済注文の取引価格
これらの項目を入力し、下の「注文」ボタンを押して、発注となります。
まとめ
以上がIFD注文の説明でした。
使いどころの多い基本的な注文方法ですから、使える仮想通貨交換所が少ないのは、ちょっと???
でも、外為のFXでは普通に使えます。
これは、市場の成熟度の違いなんでしょうかね?
取引システムをIFD注文に対応させることぐらい、仮想通貨交換所にとって大した話ではないと思うのですが…
※建て玉管理料を顧客から徴収することは、IFD注文の使い手にとってはアゲインスト。だから需要が少ないのかも、と思ったりもする…
でも、徐々に使えるところが増えていくでしょう。
以上の説明で多用した、「指値、逆指値」については、以下でまとめています。

また、IFD注文が可能なGMOコインやDMMBitcoinを含む、仮想通貨交換所の比較に関しては、以下を参照してください。


