ビットコインキャッシュハードフォークの影響 Proof of Workの危機?

2018年11月15日(日本時間16日未明)の、ビットコインキャッシュのハードフォーク…
皆さんはいかがお過ごしでしたでしょうか?

私は、急遽ビットコインキャッシュを買って、当事者気分。
リングサイドで観戦モード。十分楽しめました。

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ただ、今回の一件は、思いのほか仮想通貨全体に影響を及ぼしてしまったようです。
それも、ネガティブな方向で…

  1. ビットコインを含む仮想通貨全体の暴落のきっかけとなった
  2. 仮想通貨の基本的な枠組みであるコンセンサスアルゴリズムの安全性が疑わしくなった

今日は、この点について、個人的な見解満載で議論してみたいと思います。

ハードフォークによる仮想通貨暴落

今回のハードフォークの前、新たな通貨の配布に期待してか、ビットコインキャッシュの値段は上がっていました。

ところが、ハードフォークの後はボロボロ。
ビットコインも他の通貨も引き連れて、仮想通貨全体を引き込んだ暴落となってしまいました。

マイニングの損益分岐点に支えられてきた価格

以下は2017年11月以来のBTC/JPYのチャートです。

2017年11月以来のBTC/JPYのチャート

2017年末のピーク後に大きく値を落とし、それが回復しないまま2018年の11月まで続いています。

しかし、なぜか底値は固く、1BTC = $6,000(約66万円)を下回ることはありませんでした。

1BTC = $6,000は、実はマイナーが行うマイニング事業の損益分岐点と言われています。
ビットコインの値段が損益分岐点を割りそうになったら、マイナーが買い支える。
そのため、ビットコインの値段の固い底になっていると、市場から理解されていたラインです。

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しかし、今回のビットコインキャッシュのハードフォークのタイミングで、このラインを大きく割ってしまいました。

一時は1BTC = $4,000(約45万円)を割り込む勢い。
2018年12月頭の現時点でも、まだ1BTC = $4,000付近を低迷しています。

もちろん、マイニングの損益分岐点は大きく割り込み、中国では、マイニング機材が投げ売りされているというニュースまで、出るしまつ。

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この暴落は、ビットコインだけでなく他の仮想通貨も同様。
仮想通貨業界全体が一気に冬に突入してしまったのでした。

ハードフォークは単なるきっかけ?

でも、なぜビットコインキャッシュの問題が、仮想通貨全体に影響する???

この市場の落ち込みに関しては、ビットコインキャッシュのハードフォークは単なるきっかけにすぎなかったのだと、私は理解しています。

もともと下げ圧力が強かったのを、マイナーがマイニングの損益分岐点でなんとか抵抗するということを繰り返してきた市場です。
マイナーが耐え切れなくなる時点が来れば、きっかけが何であろうと同じことになったのでしょう。

ネガティブな要因であれば、なんでもよかった。
たまたまタイミングが合ってしまったということ。

でも、なにしろ値段が下がっているのはさみしいことです。
年末に向けてビックウエーブが来るという話が、10月ぐらいにはちらほら出ていましたが、今は全く聞こえてこなくなってしまいました。

どうも、ここしばらくは、この冬を耐えねばならない感じです。

Proof of Workの安全性に疑問符が…

仮想通貨の値段が下がったことは、一時的なこととして片づけることができます。
でも、もう一つの問題は簡単に片づけられることではないようです。

今回のハードフォークのゴタゴタで、Proof of Workが現実世界では有効にはたらかないことが、半ば実証されてしまったのではないかと、私は危惧しています。

しかも、PoWだけでなく、Proof of Stakesも含めて、経済的なインセンティブを利用しているコンセンサスアルゴリズム全体に、疑問符が付いたんじゃないか、と…

本来、ハードフォークはとてもフェアで分散的

仮想通貨のアップグレードに関する方針の違いを解消する手段として、ハードフォークは、これまでとても有効に働いてきました。

既存の仮想通貨のコミュニティに属する少数派が、深刻な方針の違いを抱えることはよくあります。
その場合、少数派は、ハードフォークによって自己の方針を具体化した通貨を作り出します。
そうして、既存の仮想通貨に迷惑をかけることなく、自己の考えを実現してきたのです。

2017年8月1日のビットコインからのビットコインキャッシュの分裂は、その成功例でした。

ハードフォーク後にどの通貨が勝ち残るかは、時間をかけて市場が決めていくことになります。
利用者が集まる通貨は生き残り、そうでなければ消えていきます。

とてもフェアで分散型の、仮想通貨らしい物事の決め方です。

ABC対SVのハードフォークは特殊だった

しかし、今回のハードフォークでは、BCHABCとBCHSVが双方お互いの存在を認めあえず、大手マイナーのハッシュパワーの取り合いを演じました。
世間でいうハッシュウォーです。

どちらかが十分な割合のハッシュパワーを握ったら、相手方のチェーンを攻撃しかねなかった。
少なくともBCHSV側の、「僕がSatoshiなんだよ!!」のCraig Steeve Wrightさんは、それに近いことを宣言していました。

そして、ハードフォーク直前には、BCHSV側がマジョリティを取ったという話も伝えられたのです。

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マイナーを組織化してマジョリティを取り、都合の悪い通貨やチェーンを攻撃する…

これって51%攻撃以外の何物でもない!!

自分がSatoshiであると主張しているCraigさんは、Satoshiのアイデアを真っ向否定する行動をとってしまったわけです。

Satoshi Nakamotoは間違っていたのか?

では、なぜこんなことが起こりえたのでしょう?
Satoshiは間違ってたんでしょうか???

Satoshi Nakamotoのビットコインの論文のCoclusionに、以下の一節があります。

we proposed a peer-to-peer network using proof-of-work to record a public history of transactions that quickly becomes computationally impractical for an attacker to change if honest nodes control a majority of CPU power.

論文調のめんどくさい英語ですが、訳してみると…

Proof of Workでは、良心的なノードがCPUパワーの過半数を握っている限りにおいて、取引履歴を改ざんしようという攻撃者の試みは、あっというまに計算量的に実行可能ではなくなる。
Proof of Workはそういう履歴の記録方式であり、この方法を使ったP2Pネットワークを、この論文で我々は提案した。

この主張そのものは間違ってはいません。
ただ、

良心的なノードがCPUパワーの過半数を握っている限りにおいて…

という前提が、現実の世界では常に成り立つわけではないということが、今回実証されてしまった。

ここでいう「良心的なノード」は、不正を働かない正直なノード、お互いに結託することなく、特定のバイアスがかかることなく、誠実に自己の役割をこなすノードを指しています。
今回のハードフォークの一件は、この状態からはかけ離れている…

なぜそんなことになったかって???

この世界が狭すぎるからです。

みんなが良心的であるには、世界は狭すぎる

みんなが良心的であるには、どういう条件を満たさなければならないか…

みんながお互いに影響しあうことができないことが必要です。
互いに影響しあえば、バイアスがかかる。
そして結託し、組織化されるんです。

そんでもって、仮想通貨って狭い世界なんですよ。
互いが近すぎて、影響しあうしかないほどに…

一番大きなコミュニティを抱えているビットコインを例にとります。

マイナーがしのぎを削って投資をし、競争を続けていますよね。
仮想通貨の世界の中にいると、とてもすごい規模のビジネスを争っているように見えます。

でも、ビットコインのマイニングで得られる総収入って、まったく大したことないんです。

1BTC = 50万円として、1年間のマイニング総収入を計算すると…

年間ブロック数:52560 × マイニング報酬:12.5BTC × 価格:50万円
= 3,285億円

3,285億円…
小さい…

トヨタの2017年度の利益は、1兆8,312億円です。
日本国内ですら、上位10社の利益は、5,000億円を超えています。

ビットコインのマイナーを一手に買い取ることのできるレベルの会社は、世界中にたくさんあるのです。
メリットがないから、そうしないだけ。

現在のビットコインのマイナーは、この狭い中にひしめき合っている。
保身のためにお互いが結託するのは当たり前。
そうでないほうが不自然です。

良心的なノードがCPUパワーの過半数を握っている限りにおいて…

は、成り立ちえないのです。

同じ問題は、他のコンセンサスアルゴリズムも内包しています。

Proof of Stakeでも、Proof of Importanceでも、良心的なノードが過半数であることが成り立たなければ、安全ではありません

まあ、膨大な電気代を浪費しても安全性を保障できないPoWよりは、はるかに良いかもしれませんが…

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まとめ

ビットコインキャッシュのハードフォークによって、仮想通貨の根幹であるコンセンサスアルゴリズムの脆弱さが露わになってしまいました。

これをもっていますぐ仮想通貨が崩壊、ということはないでしょうが、根底にある不安要素として、ずっとくすぶり続ける話題となりそうです。

個人的には、Proof of Workのような経済的なインセンティブをベースとした分散システムよりも、注意深く集められた複数の代表ノードによる公開された緩い中央集権のほうが、リスクが少ないと思っています。

どこかの時点で、ビットコインも他の通貨も、その根幹部分を問い直すことになるかもしれませんね。